公開日: 2026年10月28日

作業分析

作業時間のばらつきを減らすには?測定・原因分析・改善の手順

    同じ作業なのに、いつもより時間がかかる回がある。原因は作業者の習熟だけでなく、部品の探索、治具への再セット、設備待ちなどにあるかもしれません。平均時間だけでは、こうした遅れを見落とすことがあります。

    本記事では、自動車部品のユニット組立を例に、作業時間の測定条件、平均・中央値・レンジの読み方、原因分析と改善の手順を解説します。速さだけを求めるのではなく、遅れややり直しが起きにくい作業方法を整えることが目的です。

    作業時間のばらつきを減らす8つの手順

    1. ばらつきを調べる前に、比較条件を揃える

    揃える条件

    違っていた場合の扱い

    品番・部品仕様

    品種ごとに分ける、条件差を記録する

    治具・工具・設定

    設備条件が違う比較として区別する

    部品供給・配置

    不足・補給・移動の違いを原因候補へ残す

    開始・終了の境界

    同じ事象で測り直す

    検査・確認の範囲

    省略された作業がないか照合する

    時間帯・付随作業

    補給・交換・停止が含まれるか記録する

    熟練者と新人の動画を比べるときも、条件が違えば時間差のすべてを技能差と呼ぶことはできません。まず設備・材料・方法を確認し、そのうえで判断や動作の違いを調べます。

    2. 一周期を要素に分けて測る

    例では、部品照合、治具セット、締結、検査確認、取り出しに分けます。各区間の境界と、一周期の境界を揃えます。動画の時刻と測定記録を対応づければ、長かった区間を後から確認できます。

    工具探索、供給待ち、異常品の処置が起きたサイクルは、時間と理由を記録します。「通常サイクルの時間」と「異常込みの実績」を両方持つと、作業方法と供給・停止の課題を区別できます。

    3. 平均・中央値・レンジを併用する

    同じ品番・作業方法のユニット組立を5回測り、30・31・43・31・31秒だったと仮定します。これは計算を説明するためのデータです。

    指標

    計算・値

    読み取れること

    平均

    合計166÷5=33.2秒

    全体の時間を平均化した値

    中央値

    小さい順の中央=31秒

    中央付近のサイクルの目安

    レンジ

    43−30=13秒

    観測した最大と最小の差

    43秒だった回の動画を見直し、通常の回にない作業を確認します。この5回だけで工程全体の安定性を証明することはできません。

    4. 長いサイクルを消さず、原因を残す

    43秒のサイクルに、部品を探す時間が12秒含まれていたと仮定します。このサイクルから探索時間を引くと31秒で、残り4回の平均30.75秒と近い値です。探索が時間の延びに関係しているという仮説を立てられますが、ほかの条件差も確認してから原因を判断します。

    標準の方法を検討するために通常サイクルを分けることは可能です。一方、実績全体の平均や探索の発生率も残し、除外した理由を明記します。長い値を削除して「安定した」とすることはできません。

    原因候補

    動画・記録で確認すること

    改善案の方向

    部品・工具を探す

    どこで迷うか、何が見分けにくいか

    識別、定位置、補給ルール

    セットをやり直す

    着座、部品向き、治具の状態

    治具・ガイド・手順の見直し

    表示の確認に迷う

    見る位置、表示の意味

    表示位置・判定説明の改善

    設備・供給待ち

    停止記録、補給時刻、前工程

    設備・供給側の原因対策

    判断が人で違う

    同じ場面で見ているもの

    正常・異常の判断基準の共有

    5.発生頻度と影響を分ける

    課題の大きさは、遅れ一回の長さと発生頻度の両方で見ます。たとえば12秒の探索が100サイクル中10回なら、合計120秒、一個当たり平均1.2秒の遅れです。品質や作業負荷への影響も含め、先に対策する課題を決めましょう。

    6.同じ区間を見ながら理由を聞く

    動画で止まっているように見えても、本人は重要な判定をしていることがあります。「このとき何を見ていますか」「判断が変わる条件は何ですか」と確認し、見える動作と必要な判断を結びます。

    7.方法・配置・教育のどこを変えるか決める

    部品識別の問題なら配置や表示を、着座の問題なら治具・セット方法を、判断の問題なら標準と教材を見直します。複数の変更を一度に入れると効果の理由がわかりにくくなるため、試す範囲と確認項目を決めます。

    8.同条件で再測定する

    改善後も平均だけでなく、長いサイクル、探索の回数、やり直し、確認漏れ、作業負荷を見ます。違う品種のデータや観測数の違いは明記し、偶然の短い値を成果として扱いません。成立を確認した方法を標準と教育へ反映します。

    よくある質問

    ばらつきの大きい人だけを教育すればよいですか?

    供給、設備、治具、条件の違いを先に確認します。技能や判断が原因の場合も、単に「速くして」と伝えるより、違いが出る要素と確認方法を共有して再評価します。

    最大と最小の差が小さければ安定していますか?

    レンジは観測数や偶然の一値の影響を受けます。条件を揃えたデータの分布・発生順・原因記録を併用し、長い値がどの条件で発生するかを確認してください。

    まとめ:長いサイクルの理由を確かめ、再現できる改善へつなぐ

    • 品番・設備・供給方法と測定範囲を揃える

    • 平均・中央値・レンジを併用し、長い区間を消さずに理由を記録する

    • 改善案を一つの工程や限られた品番で試し、同じ条件でばらつきが減ったか確認する

    多数のサイクルを手作業で見比べる負担は、AIで減らせます。サイクル検出や対応区間の時間比較を自動化し、差が生じた場面へ戻って条件を調べやすくなります。

    サイクル検出・作業時間の比較を自動化できる製造業特化の作業分析AI「Ollo Factory」

    ① 同じ作業区間を並べて確認する

    作業動画を比較し、時間差がある要素を確認できます。セットの動き、部品探索、締結や検査の区間へ戻り、何が違うかを映像で確認します。

    Ollo Factoryで同じ作業区間の動画を並べて動作と時間差を比較する画面

    Ollo Factoryの公式デモ画面。本文のユニット組立例とは別の作業です。

    ② 差のあるサイクルを追う

    サイクルごとの作業時間を比べ、時間が長い回の映像を確認できます。平均値だけで見落としやすい部品探索ややり直しを調べ、作業方法、配置、教育のどこを見直すか検討するのに役立ちます。

    Ollo Factoryで繰り返し作業のサイクルごとの時間差をグラフで確認する画面

    Ollo Factoryの公式デモ画面。本文のユニット組立例とは別の作業です。

    差が見えただけで原因が確定するわけではありません。作業者の速さだけを評価せず、設備・品種・部品供給などの条件を揃えて確認します。

    関連機能:作業比較

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    この記事の執筆者

    株式会社Ollo
    事業開発部リーダー マーケティング担当 Yoshida

    製造業特化型の作業分析AI「Ollo Factory」を開発・提供する株式会社Ollo(東京大学 松尾研究室発のAIスタートアップ)で、事業開発とマーケティングを担当。
    大学時代は工学部で設計開発を学び、新卒で大手自動車メーカーに入社。新型EVの開発グループで、設計から工場での生産まで幅広くプロジェクトに携わり、研修の一環として、実際に自動車製造工場でのライン作業も経験。その後、製造業領域のスタートアップで営業・マーケティングに従事。
    現在は、製造現場でのAI活用を促進し、よりワクワクする働き方を実現できるよう、「Ollo Factory」の販売・マーケティングに取り組んでいる。

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