公開日: 2026年10月23日

作業分析

OWAS法とは?作業姿勢の評価手順と記録例

    低い部品箱から物を取る、体をひねって治具へセットするなど、組立作業には負担のかかる姿勢が含まれます。どの場面から改善するかを考える方法の一つが、作業姿勢を分類するOWAS法です。

    OWAS法は、背中・腕・脚・扱う荷重を4桁のコードで表し、評価表で改善の必要性を確認する観察手法です。本記事では、自動車部品のユニット組立を例に、コードの読み方、観察・記録の手順、改善前後の比較方法を解説します。

    OWAS法とは?姿勢から改善の優先度を考える手法

    OWASは、フィンランドで開発された作業姿勢の評価手法です。農研機構の「新型作業姿勢モニタを活用したOWAS法評価支援システム」でも、体幹・腕・脚・荷重を4桁で記録し、4段階のアクションカテゴリーで評価する方法が説明されています。

    この農研機構の資料は2005年度の研究成果で、OWASを作業姿勢の分析へ応用した例です。現行の法的基準や、個人の健康状態を診断する資料として扱うものではありません。

    背中・腕・脚・荷重に対応する数字を組み合わせて、4桁の姿勢コードを作ります。次に、使用するOWAS評価表にコードを照合し、AC1〜AC4を確認します。姿勢の分類と、改善の必要性を表すACを分けて記録しましょう。

    OWASは作業の比較や改善箇所の発見に役立つ一方、指先の細かな動き、首や手首の状態、振動、反復頻度などを十分に表せない場合があります。課題に応じて他の評価や専門的な確認を組み合わせます。

    4桁のコードとACは別の情報

    コードとACは、次のように分けて読みます。

    • コード:背部・上肢・下肢・荷重を表す4桁の分類

    • AC:コードの組合せを評価表へ照合して確認する、改善の必要性

    • 判定の注意:体の一部分だけを見て、全体のACを決めない

    コードの位置

    観察する項目

    記録で確認すること

    1桁目

    背中

    直立、前屈、ひねり、前屈とひねりの組合せを区別

    2桁目

    腕

    肩より上にある腕の数を確認

    3桁目

    脚

    支持の状態、膝の曲がり、座位・歩行などを区別

    4桁目

    荷重

    取り扱う重量を確認し、対応する区分を記録

    背中4区分、腕3区分、脚7区分、荷重3区分を組み合わせると252通りです。使用する分類表と照合し、見た印象だけで数字を割り当てないようにします。

    各数字の対応は次のとおりです。分類の図とAC評価表は、東京労働局が公開する「図表2-11 リスク評価手法例としてのOWAS法」(本文59〜60ページ)で確認できます。

    桁・部位

    コードと姿勢

    1桁目:背中

    1=まっすぐ、2=前後に曲げる、3=ひねる・横へ曲げる、4=ひねりと前後・横への曲げが組み合わさる

    2桁目:腕

    1=両腕とも肩より下、2=片腕が肩の高さ以上、3=両腕が肩の高さ以上

    3桁目:脚(1〜3)

    1=座る、2=両脚を伸ばして立つ、3=片脚に重心を置き、その脚を伸ばして立つ

    3桁目:脚(4〜7)

    4=両膝を曲げて立つ・中腰、5=片脚重心の中腰、6=片膝または両膝をつく、7=歩く

    4桁目:荷重

    1=10kg以下、2=10kg超〜20kg、3=20kg超。重量・力の条件は使用する評価資料に合わせる

    引用元の荷重欄には「10kg以下」「10〜20kg」と境界が重なる表記があるため、ここでは10kgをコード1として区切っています。境界の運用を統一して記録し、実物の重量や作業条件を確認してください。

    AC1は、その姿勢についてOWAS上の改善措置を必要としない区分です。AC2は近い将来、AC3はできるだけ早く、AC4は直ちに改善が必要とされます。ただし、AC1でも長時間の保持、反復、振動など別の負担要因は確認します。ACを安全の認定として扱わないことが大切です。

    OWASによる観察を進める6つの手順

    1.対象作業と期間を決める

    ユニット組立の「部品を供給箱から取り、治具へセットする」など、何を観察するかを決めます。定常サイクルだけでなく、部品補給や段取りも対象にする場合は、区間を分けて記録します。品番、設備、配置、観察範囲を揃えます。

    2.全身と対象物が見えるように記録する

    背中・腕・脚が見え、対象物と作業位置を確認できる画角を用意します。体が設備で隠れる場面は、推測で分類せず「判定不能」として残します。必要に応じて別の角度から撮影します。

    3.観察間隔と採用ルールを決める

    OWASでは、あらかじめ決めた間隔で姿勢を観察し、各姿勢の出現割合を調べます。観察間隔が作業周期と重なると同じ姿勢ばかりを拾うため、複数周期を確認して観察条件を決めましょう。短時間だけ現れる負担姿勢は、定間隔の集計とは分けて記録します。観察間隔、回数、対象区間を残し、改善前後で条件を揃えます。

    4.姿勢と荷重を別々に確認する

    動画から背中・腕・脚を観察し、荷重は対象物の記録などで確認します。映像の見た目から重量を断定しません。判定しにくい姿勢は評価者同士で照合し、用いた分類の基準を残します。

    5.コードを評価表へ照合する

    4桁を揃えてからACを確認します。体の一部の状態や荷重だけでACを決めないことが大切です。自動解析を利用する場合も、代表的な場面と判定が難しい場面を映像へ戻って確認します。

    6.改善を検討し、同条件で確認する

    高いACの場面がどの作業で起きたかを確認し、部品箱の高さ、供給位置、治具へのアクセスなどを検討します。変更後は同じ品番、荷重、作業範囲などを揃えて再観察し、品質や他の姿勢へ負担が移っていないかも確認します。

    ユニット組立の記録例

    以下は、評価表の読み方を説明するためのモデルです。実際の現場やOllo Factoryで解析した結果ではありません。対象物の重量を5kgと仮定し、二つの姿勢のコードをOWAS評価表に照合しています。

    場面

    観察した状態

    コード

    評価表上のAC

    確認・検討すること

    治具の前で部品を保持

    背中は直立、両腕は肩より下、両脚を伸ばし均等に支持、荷重5kg

    1121

    AC1

    この姿勢以外の負担や反復・保持時間も確認

    低い供給箱から取り出す

    背中は前屈、両腕は肩より下、両脚を伸ばし均等に支持、荷重5kg

    2121

    AC2

    箱の高さと位置を検討し、変更後も部品照合と取り違え防止を維持

    低い箱を高くする案でも、腕を高く上げる姿勢や視界の遮りが増えれば、別の課題が生じます。ACの変化と実際の作業のしやすさを一緒に確認しましょう。

    例えば低い箱から5kgの部品を取る姿勢は、「前屈=2/両腕は肩より下=1/両脚を伸ばして立つ=2/荷重5kg=1」で2121です。上記資料60ページの評価表で、背部2・上肢1の行と、下肢2・重量1の列が交わる値は2なので、AC2と記録します。脚や荷重の条件が変われば、同じ前屈でも評価が変わるため再照合します。

    記録は「作業の場面」「観察した姿勢」「確認した荷重」「4桁コード」「評価表上のAC」「改善案」の順に整理します。改善後も同じ対象区間を観察し、姿勢の変化と作業のしやすさを確認しましょう。

    姿勢一つの評価と、作業全体の集計を混同しない

    一枚の画像のACだけでは、その作業中にどの程度現れるかはわかりません。集計では観察総数、判定可能数、判定不能数、各コードやACの出現数を分けて残します。

    たとえば50回観察し、判定できたものが48回、判定不能が2回なら、各ACの出現割合は「判定可能な48回を分母にした観察割合」と明記します。判定不能が特定の作業に偏っていれば、集計にも偏りが生じます。観察割合を作業時間の割合として読むには、対象区間と観察間隔が適切か確認する必要があります。

    ACは改善の必要性を示す区分です。AC1とAC3の平均をAC2として扱ったり、異なる荷重・観察範囲の結果を並べて改善効果を断定したりしないでください。

    改善前後の記録に残す項目

    作業名、品番、設備と配置、荷重の確認元、撮影条件、観察方法、分類基準、評価者を残します。改善後に作業の速さや順序が変わった場合、その条件差も記録します。

    改善の案は「部品箱を高くする」の一文で終わらせず、設置位置、補給時の扱い、部品の照合、干渉、現場での確認担当者まで決めます。安全に関わる判断は、現場の責任者や専門担当者と確認します。

    よくある質問

    写真一枚でも評価できますか?

    見える姿勢と確認済みの荷重についてコードを照合することはできます。ただし、それだけで作業全体の負担や出現割合を評価することはできません。複数の場面と条件を確認します。

    REBAなど他の手法との使い分けは?

    必要な評価項目に合わせて選びます。OWASで表しにくい体の部位や細かな条件が課題なら、他の手法を検討します。異なる手法のスコアを同じ数字として足したり平均したりせず、それぞれの定義で解釈します。

    まとめ:姿勢・荷重を分類し、改善の必要性を判断する

    • 観察する作業と方法を決め、背部・上肢・下肢・荷重を記録する

    • 4桁のコードを評価表と照合し、ACと観察条件を残す

    • 結果だけで安全を確定せず、現場の条件や他の評価も合わせて改善を検討する

    動画から姿勢を抽出し、評価候補を整理する作業にはAIを活用できます。記録の負担を減らしながら、見えにくい姿勢や荷重条件は担当者が確認しましょう。

    動画の姿勢分析・評価候補の整理を自動化できる製造業特化の作業分析AI「Ollo Factory」

    ① 動画から姿勢評価の候補を確認する

    マーカーを付けずに作業動画から姿勢を解析し、OWAS・REBAの評価を確認できます。全身が見える撮影条件を整え、負担姿勢が現れる作業区間へ戻って確認します。

    OWASの結果を作業の時間軸で確認する画面|Ollo Factory公式公開デモ

    Ollo Factoryの公式デモ画面。本文のユニット組立例とは別の作業です。

    ② コードと分析条件を確認する

    結果詳細では姿勢コードや荷重などを確認できます。荷重は実物の情報で確認し、必要に応じて手動設定を修正します。映像だけで重量を正しく自動判定できると考えないことが大切です。

    姿勢コード・荷重などを確認する結果詳細画面|Ollo Factory公式公開デモ

    Ollo Factoryの公式デモ画面。本文のユニット組立例とは別の作業です。

    AIの評価は確認の材料であり、健康の診断や安全の認定ではありません。見えにくい姿勢、分類、荷重の条件を照合し、改善は専門担当者・現場責任者と検討します。

    関連機能:作業姿勢の評価

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    この記事の執筆者

    株式会社Ollo
    事業開発部リーダー マーケティング担当 Yoshida

    製造業特化型の作業分析AI「Ollo Factory」を開発・提供する株式会社Ollo(東京大学 松尾研究室発のAIスタートアップ)で、事業開発とマーケティングを担当。
    大学時代は工学部で設計開発を学び、新卒で大手自動車メーカーに入社。新型EVの開発グループで、設計から工場での生産まで幅広くプロジェクトに携わり、研修の一環として、実際に自動車製造工場でのライン作業も経験。その後、製造業領域のスタートアップで営業・マーケティングに従事。
    現在は、製造現場でのAI活用を促進し、よりワクワクする働き方を実現できるよう、「Ollo Factory」の販売・マーケティングに取り組んでいる。

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