公開日: 2026年10月22日

技術継承

多能工化の進め方|スキルマップから育成順を決める方法

    製造業の多能工化は、一人が複数の工程を必要な条件で担当できるように育成し、欠員や生産の変化に対応できる体制をつくる取り組みです。全員へすべての仕事を教えることや、スキルマップの丸を増やすことが目的ではありません。

    まず、どの工程の代替要員が不足しているかを確認し、その工程を担当できる人を計画的に増やしましょう。本記事では、自動車部品のユニット組立を例に、スキルマップから育成順を決める方法を解説します。

    多能工化の進め方

    1.工程の必要人数と代替要員を確認する

    対象工程を部品照合・セット、締結、検査などへ分け、通常時の必要人数と、欠員時に止まりやすい仕事を確認します。需要の変動、品種、勤務帯、設備を対象条件に含めます。

    育成の優先順位は、次の三つから検討します。

    • 工程の重要性:欠員が生産・品質・安全に与える影響

    • 代替要員:担当できる人が一人に集中していないか

    • 育成の実行条件:資格・教育、指導者、習得期間を確保できるか

    2.スキルマップの評価段階を揃える

    段階の例は、0:未習得、1:説明できる、2:指導付きで実施できる、3:指定条件で単独実施できる、4:指定条件で指導できる、の5段階です。1では手順と確認点を説明できることを確認し、受講しただけでは評価を上げません。担当許可は、この段階とは別に現場の承認ルールで判断します。

    「未評価」は0と別に記録します。評価のない人を能力不足と決めつけず、対象品番・設備・標準の版・評価日と証拠を残します。厚生労働省の職業能力評価基準も、能力の整理を考える参考になります。本記事の段階は公的認定ではありません。

    3.弱い工程から育成の優先順位を決める

    以下は、同じ勤務帯でユニット組立を担当する説明用のスキル表です。3以上を、定義した条件で担当可能と仮定します。実在の従業員の評価ではありません。

    担当者

    部品照合・セット

    締結

    検査

    育成候補

    A

    4

    3

    2

    検査の単独実施へ向けた確認

    B

    3

    4

    3

    締結の指導とバックアップ

    C

    3

    2

    2

    締結の習得

    D

    2

    1

    1

    前提教育とセットの習得

    この表では、部品照合・セットは3人、締結は2人、検査は1人が担当可能です。検査を担当できるのはBだけなので、Aの検査習得が優先候補になります。ただし、Bの不在時にAを検査へ配置すると、締結を担当できる人がいなくなります。

    欠員時にも各工程を動かすには、Aの検査習得とCの締結習得などを組み合わせて、育成順を決める必要があります。

    3工程をそれぞれ1人で同時に動かす場合、B不在時に「A=検査、C=締結、D=部品照合・セット」の配置を組めるよう、Dのセット習得も必要です。各自の習得と配置の承認が揃ってから、この配置へ切り替えます。

    育成する工程が決まったら、ムダな動作や手順の不足がないかを確認します。教材へ残す前に作業方法を見直し、変更が必要な場合は確認・承認して標準へ反映します。

    4.教育時間と到達条件を計画する

    育成の対象

    前提・教材

    到達条件

    Aの検査習得

    承認済みの判定基準、正常・異常の見本

    基準に沿って判定でき、不明時に停止・区分・報告ができる

    Cの締結習得

    必要な操作教育、条件表、手順動画

    条件と順序を守り、締結完了を確認できる

    Dのセット習得

    部品識別表、治具への置き方

    部品・向き・着座を確認できる

    期限だけでなく、使用する教材、指導者、評価者、教育時間を決めます。教育中の通常生産を支える体制も確保してください。重要な安全・品質項目が未達の場合は、速度や他の項目で平均して合格にしません。

    5.担当できる条件を確認して配置へ反映する

    実技の評価と承認が済んだら、スキル表を更新します。別品番、別設備、条件変更で再確認が必要な場合は、その範囲を残します。長期間実施していない作業も、すぐ同じ条件で担当できるか確認してください。

    欠員を想定した配置を試し、同じ人が同時に必要な二つの工程へ割り当てられていないか、確認や搬送が抜けないかを検討します。担当可能者の増加と、生産体制の成立をそれぞれ確認します。

    多能工化が進まないときの見直し

    教える人ごとに方法が違う

    正式な作業標準・判定基準を先に揃え、動画や写真で同じ見本を共有します。良い方法が見つかった場合は、個人のやり方として広める前に確認・承認して標準へ反映します。

    一人だけが教育と生産を抱える

    育成の対象と範囲を絞り、指導時間を確保します。教材の作成・評価記録の負担も含めて計画し、通常業務への追加だけで回そうとしないようにします。

    担当可能者が増えても欠員対応ができない

    勤務帯、他業務、同時配置、品番条件を確認します。評価の丸だけで数えず、実際に必要な時間帯で役割が埋まるかを見直します。

    よくある質問

    全員をすべての工程で育てるべきですか?

    必ずしも必要ではありません。影響の大きい工程の代替要員を確保するなど、目的と教育時間に合わせて順番を決めます。

    動画の受講完了をスキルレベルへ反映できますか?

    受講は学習の記録です。担当できるレベルへ更新するには、指定条件の実技と必要な判断・行動を確認し、社内の承認を行います。

    まとめ:必要な体制から育成順を決め、担当可能な条件を確認する

    • 欠員時に止まりやすい工程と、代替要員の不足を把握する

    • 資格・指導者・習得期間も考えて、育成する工程と人を決める

    • 習得を確認し、同時に必要な人数と配置が成立するか見直す

    複数工程の教材づくりや、教育後の作業比較はAIで自動化できます。共通の手順と動画の根拠を揃え、どこを再教育するか具体的に判断しやすくなります。

    工程別の教材作成・作業比較を自動化できる製造業特化の作業分析AI「Ollo Factory」

    育成する工程の教材と、習得確認の材料をつくる

    株式会社Olloが提供する製造業特化型の作業分析AI「Ollo Factory」は、作業動画の分析を支援します。

    ① 工程ごとの教材を揃える

    作業動画から手順と説明を生成できます。優先して育成する工程から基準と確認点を整理し、指導者ごとに説明が変わる状態を減らす教材の初稿をつくれます。

    Ollo Factoryで作業動画と自動生成された作業手順・作業説明を確認する画面

    ※Ollo Factoryの操作画面例です。本記事の説明用ユニット組立を解析した結果ではありません。

    ② 作業の比較から再教育する箇所を確認する

    同じ作業を比較し、要素ごとの違いを確認できます。時間だけで合否を決めず、順序や確認の抜けを映像と照合する材料にできます。

    Ollo Factoryでお手本と比較対象の作業動画を並べ、要素別の時間差と作業漏れの箇所を確認する比較分析画面

    ※Olloの公式サイトで公開しているデモ画面です。本記事の説明用ユニット組立を解析した結果ではありません。

    人員の最適配置や技能の承認を全て自動決定するものではありません。対象品番・条件、同時配置可能人数、教育時間を自社で管理します。

    詳しい機能:工程ごとの教材を揃える、作業の比較から再教育する箇所を確認する。

    多能工化のための教材整備と再教育の準備を効率化したい方は、活用方法をご確認ください。 Ollo Factoryの資料を請求する。

    この記事の執筆者

    株式会社Ollo
    事業開発部リーダー マーケティング担当 Yoshida

    製造業特化型の作業分析AI「Ollo Factory」を開発・提供する株式会社Ollo(東京大学 松尾研究室発のAIスタートアップ)で、事業開発とマーケティングを担当。
    大学時代は工学部で設計開発を学び、新卒で大手自動車メーカーに入社。新型EVの開発グループで、設計から工場での生産まで幅広くプロジェクトに携わり、研修の一環として、実際に自動車製造工場でのライン作業も経験。その後、製造業領域のスタートアップで営業・マーケティングに従事。
    現在は、製造現場でのAI活用を促進し、よりワクワクする働き方を実現できるよう、「Ollo Factory」の販売・マーケティングに取り組んでいる。

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